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中川ひろたかセルフ・ライナーノーツ

いちについて ぼくのうたきみのうた5 藤本ともひこ&ON'S(大友剛・野々歩・中川ひろたか)最新アルバム

おじいちゃんちのカメ

2010-2-11 16:01

  • 作詞:新沢としひこ
  • 作曲:中川ひろたか
  • 作成年月 : 1987-8?
    初出:音楽広場(1987-9クレヨンハウス)
    初出アルバム : カセット『世界中のこどもたちが』(1988 クレヨンハウス)
    初出楽譜集 : 月刊「音楽広場」別冊『世界中のこどもたちが』(1989 クレヨンハウス

9月号ですから、敬老の日ということでこの歌なんだけど、
敬老かどうかは、ビミョー。

「さっちゃん」でおなじみの阪田寛夫さんの本「童謡でてこい」に、この歌のことが書かれてる。
一部掲載させてもらうが、これは、おそらく、1988年頃、
クレヨンハウスでやっていた『トラや帽子店マンスリーコンサート』に
阪田さんをゲストでお呼びしたときのことだろうと思われる。
以下…

新沢としひこ氏という、私の目から見ると風変わりな青年が、一年前のある日、青山の小さなホールの子ども向けコンサートの舞台に、力なく上がってきた。何をしにきたのだろう。電気の配線の工合が悪くて、裏方の係員が調べに来たのかしらと思ったが、ステージの三人の音楽家が知らん顔で、演奏を続けている間、青年は何もせずに、自分の重心がうまくつかめないのか、ななめにかしいだり、あやうくまっすぐ立ち直ったりしているのだった。
何と、その次の曲が始まった時、その青年はいきなりマイクをつかんだ。ええっ?と思うまに、体じゅうの息をそこへぜんぶ吸いとられるように、歌いだした。その格好にも声にもおどろいたが、コトバとふしに、もっとびっくりした。
おじいちゃんちのカーメは、
げーんきが、あ・り・ま・せン
私はいつも「一所懸命」と正しく書く癖がぬけないが、この歌い方は、どうしても、いっしょうけんめい、と言いたくなるものであった。さっき、コトバとふしにびっくりしたと書いたが、本当はコトバと、ふしと、いっしょうけんめいの、この人の一生とがべつべつではない一つの息になって、
カーメは飼うほど年老いて(ハイ)
かーめばかむほど味が出て(ハイ)
と、電気掃除機の吸いこみ口のような、マイクに吸いとられるのであった。
カッコに入れた(ハイ)は、この人ではなくて、ギターとドラムとピアノの人たちが、何だかしおれて、力なく返事をしたのであり、それはおじいちゃんに似ているという、シワだらけのカメの声のようでもあった。

〜中略〜

(その青年は、子どもの頃)風呂の中で、でたらめ歌をうたうのが好きで、毎度楽しくやっているうちに、ふと昨日うたったメロディが、今日も出てくるのに気がついた。これはすごいんじゃないか。そう思うと興奮せずにはおられなかった。小学校に入って字を教わると、そのコトバを書きつけるのが一番楽しい遊びになり、そのままずうっとここまで来てしまった、ということだ。
この歌を作曲した人は別にいて、(別にいるとはとても信じられなかったほど、変てこで、単純で、もし童謡コンクールに出品したら、きっと落選するに違いないほどユニイクな曲だ)作曲家の中川ひろたか氏も、新沢氏と同じ年かっこうの、私から見れば青年だが、中学校の時から、学校帰りに鼻歌で自分の歌を作るのが好きだった。それがやめられなくて、とうとうギターを抱えて、保育園の保父さんになって、毎日夢中であそびうたを作って遊んだというから、中川氏もまた、少年期の鼻歌あそびがそのままずうっとここまで続いてしまった、珍しい人なのであった。
この二人が、出逢って作った曲がたくさんあるが、私が仰天した「おじいちゃんちのカメ」などは、作ったというより、二人が小さい頃持ち合わせていた「すごい」ものが、向こうの方から、のこのこと出てきて握手した感じの歌だ。
———- 『童謡でてこい 阪田寛夫 河出書房新社』

楽譜集のイラストを描いた五味太郎さんは「こういうのを歌と言うんだ」と言ったって。

サビの途中に出てくる「はい」や「やんやんやんや〜ん」は、中川のアイデア。

ファックスで送られて来た詞が残っている。
文字がかすんで、ほとんど読めないが、1枚の紙に、8篇の詞がびっしり書かれている。
何枚にも分けるともったいないと思ったんだろう。新沢らしい。
目を細めて見てみると『おばあちゃんのワンピース』『さかあがり』『秋』『あんまり空が青いので』
『波乗リ少年町ヘ帰ル』『おばあちゃんの金魚』そして『おじいちゃんちのカメ』(1篇は、判読不能)
明らかに、9月号用にまとめて書いたもの。
『おばあちゃんの金魚』って、どんなんだったんだろう。


この歌のあと、妙なインストが入っている。
これは、時間調整のための策で、カセット時代によくされたこと。
カセットは、A面とB面の長さをそろえる必要があった。
どちらかが長すぎると、最後の曲が終わったあと、無音のテープをかけ続けなければならない。
それを避けるために、ちょっとした遊びを作るのだ。
クニさんは、メンバーとミュージシャン全員に、なにか音の出るものを持ってくるように指示した。
みんな思い思いのものを持って集まった。そして車座になって座る。で、クニさんからの指示を聞く。
クニさんとは、もう長年のつきあいの伊豫部さんは、すべてを察知して、テープを回し始めている。
クニさんは指示を出す。2小節音を出して、2小節目の4拍目に「え?」と言うようにと。
じゃやってみるよと始めると、
お盆に豆をのせて、ジャラジャラやっていた増田が、豆を床にこぼしてしまう。
それを下畑がなにやってるんだと、文句言う。
で、クニさんが「この二人、もう、ぜんぜん聞いてないんだから」とあきれ(よく聞くと聞こえる)、
それを見て、中川が、大笑いする。
けっこうな時間、音を出し続けていたのだが、このシーンが採用された。
ここかよという場面だが、クニさんは、ここを選んだんだね。

CDの中では、この演奏も、1曲としてカウントされていて、
(iTuneに取り込むと、不詳というタイトルになって表示される。これ、伊豫部さんが書き込んだという説あり)
これより先の曲を聴こうとすると、この「不詳」のために
1曲ずれてしまう。
カセットから、CDへの移行期の珍話ではある。

ちなみに、このカセット。
出来上がりを見ると、A面(ビスの付いている方)にB面の曲順シールが
B面にA面のシールが、貼られていた。
だから『世界中のこどもたちが』を聴こうとしてセットすると
『丘をこえたらおべんとう』が流れてしまう。
このカセットは、初版のみ。
超レア。


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